北京市順義区にある中独工業団地の実験室で、研究者たちはデンプンを入れた大きな発酵槽に乳白色の物質を加えた。40時間後、発酵槽の中身はプラスチックフィルムの製造に使用できる粉末状のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)材料に「成長」するという。PHAはバイオマテリアル、繊維、農業、医療などの分野で広く使用可能な上、海水でも土壌でも素早く自然に分解されるためことから環境保護の観点からも注目され、現在、米国やEUなどに輸出されている。
PHAを生成した「乳白色の物質」の正体は、バクテリアが形成したコロニーだ。この研究を進める清華大学合成システム生物学センター長の陳国強教授のチームが2003年、新疆ウイグル自治区にある艾丁(アイディン)湖でこのバクテリアを発見した。ほとんど水のない環境、塩分濃度が1リットル当たり200グラム、温度差約100度という、他の微生物がほとんど生きられないような過酷な環境でも生存できる上、無菌でないオープンな環境でも直接培養することができるという。
通常の微生物を高分子材料の製造に使用する場合は厳密な無菌環境が必要だが、研究グループは20年かけて艾丁湖のバクテリアを20回以上世代交代させるとともに遺伝子組み換えを実施した結果、非無菌環境でも連続培養可能なプラットフォームを構築。22年に産業化を実現した。従来の化学工業のような厳格な無菌・高圧環境を使用する必要がないため、水とエネルギーの消費量を50%以上削減でき、生産ラインもシンプルな設備で済むという。
バイオ企業・微構工場の徐絢明董事長によると、同様の技術を用いてPHAの他に医薬原料のエクトイン、化合物の3-ヒドロキシプロピオン酸、リシン、アミラーゼなども生産できるようになったという。PHAは骨粗鬆症に効果のある薬剤の開発研究も進んでいるとのことだ。優れた性質を持つ微生物たちがあらゆる物を作る材料に成長し、人間の生活に利用され、そして最後は無害無毒な形で自然に帰るというモデルが着実に構築されつつある。
人々の生活に欠かせないプラスチックや衣料品、医療製品のほとんどは、従来の化学工業によって生産されているが、水を大量に消費するだけでなく、分解されにくく自然にも優しくないという大きな欠点を抱えている。そこで注目を集めているのが、バイオ技術を用いた工業製品の合成だ。合成生物学は生物学、工学、化学、情報技術などを融合した学問で、科学者が遺伝子編集技術の助けを借りて生物を高効率な「細胞工場」へと「改造」する。「第3のバイオテクノロジー革命」と呼ばれ、多くの国が戦略的新興技術に挙げて研究開発を進めている。
中国の科学界や企業も行動を起こしており、今年に入って清華大学や北京大学を含む国内8つの大学・研究機関の16の研究チームと、合成生物学産業チェーンの川上、川下に位置する16の企業が共同で「合成バイオテクノロジー・スマートバイオ製造イノベーション連盟」を北京で立ち上げ、この分野の研究開発に力を注ぐ体制を整えた。
(出典:http://www.xinhuanet.com/tech/20230829/468cdfa007934ec9bedd32f4db2c2009/c.html)
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